昨日の、6人を車ではねた事故で、危険運転致傷罪が適用されなかった件、やっぱり気になる事が幾つかあったので、ちょっと続き。
昨日の記事のリンクも貼っておこ。
危険運転なんちゃら法についてまとめると、
1 この法律には適用要件が二通りあるけど、問題になってるのは「アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態」の定義。
2 これは、アルコール、または薬物の影響による、という直接因果関係が必要
3 たとえば睡眠薬を飲んでいたとしても、普段から睡眠薬を飲んで運転しており、また、事故後に普通に車を運転して家まで帰ったり、周囲に対してはきはき返答して意識がハッキリしていたりしたら、正常な運転が困難な状態とは言えないので適用されない
昨日の判例を見る限り、こういう理解で良いと思いました。
気になった点1
昨日の弁護士ブログの結論に違和感がある。
実際には傷害罪で有罪になっているのに、それに触れておらず割と誤解をしそうな書き方なのと、「血液検査等の薬物の影響を直後に調べる捜査が必要だというのが教訓」
という結論ですけど、血液検査をしたとしても、薬物の影響との直接因果関係を認めるには、相当ハードルが高いのは、昨日の判例を見て感じたところではあります。
無論、自分は法律の専門家ではないので、弁護士の方の書く事にどうこう言う資格はありませんが、ちょっと気になりました。
2 無罪って報じ方で、誤解してしまった。
こっちはより詳しい記事ですね。
「事故当時、被告の薬の血中濃度はそれほど高くなかった」と判断、してるから、やっぱり血液検査の問題じゃないと思うんだけどなあ。
傷害罪で有罪になっています。
でも、自分も本気で勘違いしたけど、前述の記事だと完全無罪だと勘違いすると思う。まあ、自分が勘違いしたのを記事のせいにしていると言われると辛いけど、「無罪」って書かれるとそう思っちゃうよー。
3 この事件の結果
a 危険運転致傷罪は、もともと適用が厳しい法律なので、不適用で問題なし
b 傷害罪では有罪になっており、法律としては問題なし
なんか、報道の仕方のせいで、睡眠薬飲んで人をひいたら無罪なんだー! とか勘違いする人を増やしてしまった気がするけど、そこはいいや。
ただここで気になるのは、じゃあ、危険運転致傷罪は、もともと何を想定した法律なんだろう、というのがちょっと気になりました。昨日の判例で田原睦夫裁判官が、
「正常運転困難状態にあったと認定することは,正常運転困難状態とは,「事故を起こしたときにフラフラの状況であって,とてもこれは正常な運転のできる状態ではないという場合に限定していかないと,酒酔い運転プラス事故イコール本罪ということになると,本来意図していたところよりも広い範囲を捕捉することになって危険である」と刑法208条の2の立法時に学者が警鐘を鳴らしていたのと正に同様の状態を招来する」
と言っていたのが気になるのです。
立法時に警鐘を鳴らしていた訳ですから、これは議論があって立法された法律なんだな、と分かるのですが、そもそもの立法趣旨はなんだったんだろう、と思いました。
結構詳しく乗ってるなあ。昨日の判例の裁判も、これの最後の方に乗ってる奴じゃないかなあ。
まとめると、
1 もともとは、悪質な運転でも、交通事故なので「過失」扱いだった
2 あまりにも酷い飲酒運転等があったので、厳罰化
これが趣旨だったみたいです。
確かに、わざとやったのかどうか、という部分で、アルコールを飲んでる人は、別に人をひき殺したい訳ではなかったから、過失、という理屈だった訳ですね。
ただ、あまりにも無茶苦茶する奴がいるから、厳罰化、と言われると、なるほどな、と思いました。
今回の事故でも、わざと6人を轢いてやろうとした訳ではない、という事だと思われます。
睡眠薬を普段から飲んでいる不眠症者なら、睡眠薬を原因にして厳罰化されるのは理不尽という事になるかも知れません。
睡眠薬を飲んでいない、通常の運転者でも、よそ見とかで6人に怪我を負わせる事はありえます。
結果は同じなのに、不眠症でよく睡眠導入剤を飲んでいたから、ただちに量刑が「わざとやった」レベルまで跳ね上がるのは適正でない、と法は想定していると思われます。
つまり想定されているのは、もう明らかに、運転すべきではないとんでもない状況、そもそも車に乗れるのか、みたいな酔っ払い方や、自殺するための過剰な睡眠薬接種とかから、運転を開始するような状況を想定しているのかな、と思いました。
もっとこう、「わざと」とか「故意犯」に近い奴、悪質な奴を裁くための、危険運転致傷罪だから、ちょっとアルコール、ちょっと睡眠導入剤、ぐらいで厳罰化はしないよ、という事だと思われます。
これで大体、補足終わり。
サンシャインの最終話感想を、後で書きます。