漫画村は本当に違法なのか?

b.hatena.ne.jp

ここだけ切り取ると、完全にアレな人に見えるけど、実はツイートの方を見に行くと、この話はこんな風に続きます。

 

私の言い分はこうです。 まず私は漫画村を合法なサイトだと思ってるから使ってます。 ただし、それが法に触れる事だとしたら使うのをやめます。 でも今のところ皆さんの意見から、違法だという根拠が書かれていないので水掛論だと判断しております。 私が知りたいのは漫画村を(続く)

違法だと断言出来る根拠です。 「作家に金が還元されないから」「倫理の面でアウトだから」というような曖昧なものではなく確たる根拠、つまり漫画村の運営がどの法に触れたのか、それを私に紐解いてください。 違法性が判明した暁には、私の今までの発言を撤回して漫画村はもう利用しません。以上です

 

この後、違法であることを納得されたみたいなんですが、そもそも、漫画村はどのように違法で、また、その読者はどれくらい違法なのか、根拠条文は何なのか、という話はなかなかに深い話だと思われます。

 

結論を言えば、漫画村の行っているアップロード行為は高確率で違法、しかし閲覧者は違法とならない。という結論になると思われる。

法律を含めて、これについて検討していきたい。

違法なアップロード、とは

 

www.asahi.com

まあ、これは裁判終わってないと思われますが、違法アップロードサイトへの誘導リンク集作って逮捕されております。

そもそもは、著作権法23条にこうあります。

 

第二十三条 著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。
2 著作者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。

 

そんで、この権利を侵害するとどうなるかというと、

著作権法119条で罰則が定められております。読むのは太字だけでいいっす。


第百十九条 著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(第三十条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。第三項において同じ。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者、第百十三条第三項の規定により著作権若しくは著作隣接権(同条第四項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。第百二十条の二第三号において同じ。)を侵害する行為とみなされる行為を行つた者、第百十三条第五項の規定により著作権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者又は次項第三号若しくは第四号に掲げる者を除く。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 著作者人格権又は実演家人格権を侵害した者(第百十三条第三項の規定により著作者人格権又は実演家人格権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者を除く。)
二 営利を目的として、第三十条第一項第一号に規定する自動複製機器を著作権、出版権又は著作隣接権の侵害となる著作物又は実演等の複製に使用させた者
三 第百十三条第一項の規定により著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者
四 第百十三条第二項の規定により著作権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者
3 第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて、有償著作物等(録音され、又は録画された著作物又は実演等(著作権又は著作隣接権の目的となつているものに限る。)であつて、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。)著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権又は著作隣接権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らその事実を知りながら行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者は、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

 

さすがにアップロードは、普通に公衆送信権を侵害していると解して問題なさそうです。

ただ、漫画村が若干理論武装しているところがあり、グーグルで画像検索して、違法アップロード画像が出てきたら、グーグルを著作権侵害で訴えられるかというと、そうはなっていません。グーグルはアップロードしていないから。

これを利用して、漫画村は、自分のサイトにある漫画の画像はアップロードしたものではなく、ネット上に存在するものを表示しているだけだ、というような事を言っています。

本当にそうなら、裁判をしてみないと結果は分からないですが、リンク集作っただけで逮捕された事例を見ると、違法となるのではないかと、個人的には思います。

また、正直にいって、そんなクソめんどくさい事やってる訳ねーだろ、とも思います。どこかのネットにあるものを、どうにかこうにかビューアを通して表示させているのだ、というのは建前で、実際はそのどこかのネットとも共謀している可能性が高いと考えるのが自然ではないかという気がします。

ネットのどこかにアップされている画像を表示しているだけだ、って、ほんとにそんなことありますかね。手間暇とか、安全性とか、ビューアとの整合性とか、色々大変過ぎる気がしますけど、物理的に不可能とは言えない、って感じでしょうか。

また仮に本当にどこかの画像を表示しているのだとしても、これを認めたら著作権保護とか滅茶苦茶になるし、リンク集で逮捕した状況を見ると、有罪の可能性も十分にありそうだ、と思います。(ただし、リンク集での逮捕に関しては、別件逮捕ではないかとか、法的にはやはり違うのでは、という意見があります。以下にリンクを張っておきます)

todasogo.jp

2017-10-31 - 弁護士 落合洋司 (東京弁護士会) の 日々是好日

 

あとは、海外サーバーだから違法ではないという主張もしているようですが、さきほどのリーチサイトも海外サーバーを使っていたようですが、逮捕されて国内法で裁判が行われております。

この辺は入り組んだ話になってて、なかなか難しいですが、サーバーだけ海外でも、著作権にはベルヌ条約のような国際条約もあり、日本国内から海外サーバーにアップしているなら、それは裁かれると考えてよいのではないかと思います。

たまたま手元に、著作権法詳説第10版があるのですが、

 これの576pに、原因事実発生地である結果発生地法が準拠法となる考え方の話もでておりますし、日本国内からのアップロードであれば、日本の著作権法という方向ではなかろうかと愚考しますが、この辺はかなり難しい話ではあります。

これに対して漫画村は、一切国交のない国で運営していると述べており、んな訳ねーだろ、絶対お前日本に居るだろ、と思わなくもないですが、本当にどこか国交のない国(どこなんだ?)で運営し、アップロードしているなら、国内法では違反だけど、もはや日本の法ではどうこうできない、となるかも知れません。

 

 これらを総合的に考えると、彼らの主張はどう考えても鵜呑みに出来ないので、実体としては違法なアップロードサイトであると見て問題ないのではないかと思います。日本の法ではどうこうできない場所にいるから、違法アップロードサイトではない、という定義も可能かも知れませんが、国内法に抵触しているので、一応違法ではあると考えております。

 

違法なダウンロード、とは

 さて、漫画村の閲覧者の側が違法かと言うと、違法とならない、という見解を述べさせていただきました。

著作権法30条によると、めんどくさいかっこ書きは消しますので、原文が見たい方は検索してみてください。

 

第三十条 著作権の目的となつている著作物は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。

(中略)


三 著作権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合

そう、まず、罰則があるのは、録音または録画のみです。

何でこうなったのかは諸説ありそうですが、画像や文書のダウンロードを違法にすると範囲が広くなり過ぎて難しいと思ったのかも知れません。

ただ、先ほどの、著作権法詳説第10版の339pには、電子書籍、写真、ソフトウェアに拡大することも現在検討されていると書かれております。

 

そして、実は罰則に抵触しなくても、違法という事はありえます。

犯罪とは刑法に触れる事ですが、違法であっても刑法に触れなければ犯罪とは呼べなかったりする訳です。

これは法律の考え方として結構面白いなあ、と思ったのですが、たとえば不倫で逮捕されたりはしませんが、民法における権利を侵害しており、だからこそ、損害賠償請求をされると、慰謝料を払う義務が発生してしまう。

そもそも違法ではないなら、慰謝料の支払義務がどこから発生したのか、となるので、その源泉は違法行為にあった、という理解もまあ、面白いかな、と。

つまり、漫画のダウンロードで、さしあたって罰則がないものの、損害賠償請求されたら支払い義務が発生する可能性があります。

果たして、漫画村でのダウンロードは、損害賠償請求の対象となるのか?

これは、ならないと思われます。

自分が、漫画村で閲覧したとしても、結局それは著作権法の条文が、録音、録画と限定しているために、私的な閲覧に過ぎず、条文を読む限り、違法とならないと思われるのです。

よって、漫画村の閲覧に関しては、私的利用に留まり、著作権法に抵触しないと考えられる。

 

終わりに

 漫画村自体は違法アップロードサイトと思われるが、閲覧者については、現状は違法行為ではないと思われる、というのが結論になります。

 

 なので、もともとのツイートの方が言う、「漫画村の運営がどの法に触れたのかという問題に関しては、運営が、とおっしゃっているので、著作権法に触れている、と解釈できると考えております。いや、彼らは北朝鮮等で運営を行っているから、日本の国内法は無関係だから法に触れていない、という解釈もありえなくはないですが、自分はそういう立場をとりません。

 

 以上で検討は終わりなのですが、この社会に生きるにあたって、法律を調べたり解釈できたりした方が良いのではないか? それが国や社会の根幹を成しているのだから、と思いませんか?

 

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 ということで、ではでは