申し訳ない!

昨日の記事の話なんですけど

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佐藤さんは、漫画事業者がメインという訳ではなかった!

だから昨日の話には無効な部分が多い、申し訳ありませんでした。

 

ascii.jp

ついでに、五期の売上と利益が出ているので、それについてちょっと見て見ます。これは単純に興味があるだけなので、読み飛ばしてくれてもいいです。

平成23年11月1日
平成24年10月31日】
売上 82,677,271円
利益▲10,791,242円

 

恐らく法人化して最初の決算ですね。

 

「はい。基本的な経費としては、人件費として従業員が数人と、役員報酬で、年間4000万円くらいですかね。家賃等諸経費で1000万円かかるとなると、毎年5000万円くらい定期的に入ってこないと会社が回らないということになります。言い換えると、毎年5000万円稼げば問題ないとも言えるのですが、この年は前年の売り上げが好調だったので、売り上げの見込みを1億円くらいに設定して、それに合わせて予算を組んだんですよ。でも、そこまで届かなかったので赤字です」

一見するとただの赤字ですが、役員報酬を取って赤字なので、それほど苦しくないパターンもあります。

本人も、5000万稼げば回る、と言ってますので、3000万残ってもおかしくはない。昨日言いましたが、漫画だけの収入であれば、人件費が殆どなので、給与の払い方で費用の金額は上下するところではあります。ただ、WEBスタッフがあると言ってたので、単純に漫画の人件費だけでこうなるとは考えがたいのですが、この内容だけで分かる可能性はありません。

そういえば、役員報酬で赤字だと、滅茶苦茶苦しい訳じゃないパターンがある、と言ったのは、赤字が1000万で、役員報酬で1200万を取っている場合、実際は200万の益があるのに等しかったり、キャッシュフローでは減価償却があったり、とか、色んなパターンがあるからです。ただまあ、初年度は赤字になりやすくはあります。

「── 1000万円の赤字なので、赤字幅としては小さい方でしょうか。

 赤字のほうが税金を払わなくて済みますし、このくらいだと「予算の立て方を失敗したなあ」で済むんですが、ただ、実際に会社の貯金が1000万円減りますからね。」

記事で、赤字幅が小さい、と言われるのは、そういう理由ですね。佐藤さんの回答も、それほど大失敗という感じではないのも、それが理由です。

平成24年11月1日
~平成25年10月31日】
売上 110,442,894円
利益 27,833,385円

これは相当パワーがあります。役員報酬を取った上で、利益が出ている。電子書籍での売上が大きいとのことです。しかし、佐藤さんの前回の記事の漫画家収支ってものを見る限り、費用はほぼ人件費だけで、それほど多額になる構造とは思えないのですが、電子書籍運営で費用が大きいのでしょうか。

【平成25年11月1日
平成26年10月31日】
売上 57,473,922円
利益▲42,875,409円

見てて気づいたのですが、費用が常に9000万前後で一定です。

「最初に「毎年5000万円稼げば問題ない」と言った通りで、5000万円は超えているので問題ないと言えば問題ないんですけど、前年のことがあったので、予算を1億円で組んでしまった。そしたら、全然それに届きませんでした。この年は「漫画を描かずに著作を運用するだけでどれだけ売上が出せるか試してみよう!」ということで、漫画をあんまり描かないことにしていたんですよね。それで1回会社を回してみようと思ったんです。」

結構実験的な事をやっての赤字ですね。

予算を1億で組むって、一体何が起こっているのだろう。

予算を組んだから、目いっぱい費用を使うぜ、というのは確かに通常企業ではよくある事なのですが、そもそも予算に関してはいつも費用が9000万前後なので、内容は分かる可能性がないですね。

売上と仕入れがある業者なら、仕入を増やしてバンバン売っていく目標を立てるとかあるんですけど、そういう業種ではないように見える。

本人、妻、子供などを役員に入れ、役員報酬を事業年度頭に決めて、そこで予算が決まるというパターンや、後は、広告宣伝費の投入量など、可能性は色々あります。

 

「─ 新商品(漫画)を出さないから損失分の補てんもできないですしね。

 それに、このときは、この年の11月から始めた「電書バト」という電子書籍の取次サービスを準備していた時期でもあったんですよね。」

 

新事業を始めて、新しく漫画を描かない事による赤字、という感じですね。

 

平成26年11月1日
平成27年10月31日】
売上 53,589,905円
利益▲14,624,143円

「── 売上がほとんど変わってない!むしろ微減している!

 そうなんですよね……ただ前年が悪かったので予算も下げておいたんです。なので赤字は1400万円くらいにおさえられているんですけど、4年間で言えば、トータルで4000万円くらいは赤字です。この年はWeb雑誌も始めてるんですよ。そこで漫画『Stand by me 描クえもん』を描きはじめたので、『特攻の島』を描くペースが遅くなり、単行本は年1冊しか出なくなり、雑誌をつくる経費は増えて……」

 

4年間トータル4000万赤字、との事ですが、毎年役員報酬を1000万とっていればトントンだったり、常に、売上が5000万は下回らないので、ご本人がおっしゃっていた、5000万あれば事業が回る、という基準は満たしていたりはします。損益と費用の関係は、赤字だけ見ても、そのような事情があり、見えにくいところがあります。

極論を言えば、家族を経営会議のために役員に入れ、自分に1000万、奥さんに800万、とかすると、赤字でもそれほど危機的ではない、という事があったりします。これは佐藤さんがそうだという事ではなく、一般論の話です。

売上と結果の利益だけでは、実態が分かる訳ではない、という話です。

1000万の赤字、即座に倒産だ、とならないのはそのような理由によります。一方で、黒字でも倒産するのは、利益とキャッシュフローが違うからです。

借入金の返済は、費用となりません。

一見すると、利益が1000万あっても、年間の借金の返済が3000万あれば、手元のお金は凄い勢いで減っていく事になります。そして、黒字であるのに、借金が返済できず倒産する、という事になります。

ちょっと話が逸れてしまった。

佐藤さんは無借金経営のようですけどね。

平成27年11月1日
平成28年10月31日】
売上 289,736,401円
利益 87,754,023円

これが、話題に出ていた利益ですね。

「ぼくの著作電子書籍がちゃんと売れて、「電書バト」もうまく回るようになってきたんです。紙の本はついに一冊も出なかったんですけど、過去最高にもうかりました。」

電書バト事業と、本人の著作売上によるもの、みたいですね。しかし、基本は漫画業界により収益をあげる事業体なのは間違いないところではあります。ただ、次の述懐は気になります。

「純利益が8700万円出たので、前年までの4000万円の赤字を取り返して、プラス4700万円お釣りが来た感じですね。前年まで2年連続で5000万円台の売り上げだったのですが、今期は2億円稼ぐ、と決めて強気の予算を組んでいました。この間、税金を3500万円ほど支払ってきたばかりなんですけど、あんまり黒字でも税金で取られちゃうんですね。もしも弱気になって、5000万円で予算を組んでいたら、2億円以上の黒字が出てしまい、税金が大変なことになっていたと思います。だから、ちょっと黒字になるように予算を組むべきなんですけど、予想以上にもうかってしまいまして。何にしても助かりました。」

予算の組み方で、税金を自由に上下できる、というこの考え方には謎が多い。

黒字が出ると税金が大変、とおっしゃるのですが、赤字が出る、という事は、その分費用でお金が出て行ってるので、税金を払っても、本来は残るお金が大きい筈なのです。

法人税の実効税率はざっくり35パーセントぐらいなので、どうなるか検討してみましょう。

売上が1億で、費用が5000万、5000万の35パーセントで、1750万。

 

1億-5000万-1750万=3250万円 が、お金として残る筈ですね。

 

これがもったいない! だから、1750万を費用として追加して使うぞ! となったとしましょう。

1億-元々の費用5000万-追加の費用1750万=3250万円

この3250万に35パーセントの税金がかかります。

千百三十七万五千円くらいですけど、もう面倒なので、1140万円としましょう。

3250万円-1140万円=2110万円

3250万お金が残る筈だったのに、使ったせいで、2110万になってしまった!

って当たり前ですよね。長々と計算式書く必要あるのかと思ったかもしれませんが、一応、確認のためなのです。

思いっきり脱線しますけど、じゃあ、一体どのような形で、費用として使ったけど、税金を払うよりもこれでよい、となる場合があるのか、について説明します。

 

1 役員報酬

  同族会社などでは鉄板です。個人は累進課税なので、法人税を上回らないようにする必要があったりしますが、役員報酬でお金が出て行っても、実際には手元にお金が残るのです。

 

2 減価償却資産

  必要であれば、車を買ったりする場合があります。前から車は必要であった訳ですから、どうせだったら費用になるんだから買う。という場合です。不必要な車を買うと、いらないもののためにお金が出て行くから全く無意味です。ただ、一部外車などが、中古でも後から高く売れたりするために、(中古の高い外車を買う→減価償却で費用化→頃合いを見て売る)なんてやり方はなくはないです。上手く売れる保証がないけど。

3 保険

  保険は、後からお金が返ってくるものも多いので、費用として払って、頃合いを見て解約返戻金を貰う事があります。倒産防止共済だの、そういう、後から返ってくる系の奴を費用にしておけば、後からお金を返して貰えるのでコントロールできる。

 

あとは、給与や賞与として従業員に還元した方がよい、というような考え方もあります。

 

なんか完全に脱線したな。

 

そう、元はと言えば、佐藤氏への意見は、攻撃的過ぎたのでは、みたいな話でしたね。

佐藤氏が今まで出版社と揉めてきた流れへの評価は、出版界をよりよくするものなのか、単に色んな漫画家のように揉めているだけなのかは人によって評価が分かれるとは思いますが、電書バトのような取次サービスは、社会的意義もあるところでしょう。労働問題に熱心に取り組んできて成果を出してきた、と評価する方もいらっしゃると思いますので、申し訳ありませんでした。

 

私は、漫画業界で儲けて、また、せっかく今も漫画業界を変えようと頑張っている佐藤氏の、問題への結論というか、投げかけ方が、漫画界滅べとか斜陽産業だとか、そういう投げやり気味なのに、ちょっと意見したかった、というのが実態ではあります。

あんまり建設的ではない投げ方ではないか、という感想でもあります。

いや、むしろ、佐藤氏のその投げかけ方は、実感の伴うものであるとか、愛故であるとか、一種の諧謔であるとかは、その通りだと思います。

ただ私のような部外者としては、少々投げやり過ぎに受け取ってしまった、というところです。

いいや、佐藤氏は頑張っている、お前の意見は幼稚だ、というご意見に関しては、頭を垂れる他ありません。

漫画界が真に斜陽産業かどうかは、評価の別れるところではございますが、まだまだ可能性がある、と私のようにとらえるものもいれば、売上は全体的に下がっているから斜陽だ、と考える方もいらっしゃるでしょう。これはしかし、決着がつく話ではないと思います。

 

ご不快に思われた方は申し訳ありません。

 

話としては以上です。

 

余談ですが、様々な努力の結果、10%のひと握りとは言え、スターになれる、という産業構造をどのようにとらえるか、というところがあります。

私は常々、8000万円あればもう働かなくても良い、いや、5000万円でも良い、3000万でも……と思ってしまう人間で、FXのスワップポイント利息で、なんとか賄えないか、と考える人間ではあります。

一度でも、8000万なり、5000万なりのお金が手元に残るのならば、その博打にはかなりの魅力と利益がある、と、脱線しましたが、今後も安定して売上があがるとは限らない、漫画家というリスクに満ちた職業であっても、アシスタント諸氏が、佐藤氏に限らず、尾田栄一郎などを目指して、そこに魅力を感じるが故に低賃金でも気にしない構造になっているところではないかと愚考するところではあります。

 

お騒がせして申し訳ありませんでした。

 

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