飲食店の立地調査 マーケティング

飲食参入について、一般的な傾向 その立地マーケティングとは

 

 飲食業界は、新規開業業者の半数が3年間で廃業するといわれる、盛衰の激しい業界だ。一般的に、飲食業界に算入する時に開業者はどのような準備や注意を払っているか解説するけど、飲食の専門家じゃないので、一般的に本に書いてるような事を書きます。

 

1 立地マーケティング

  飲食業界において立地が極めて重要なのは論を待たないところだ。凡そ、飲食業者は、①人口②交通量③周辺マーケット状況・競合店④動線⑤視認性⑥商圏、などに注目していると言われている。

 

①人口

 地域の役所に行き、人口や世帯数の統計データを入手するところから始める者もいる。ただし、駅前などは住むところではないので住民データが意味を成さない場合もある。駅の乗降客数データを調べる場合もあるようだ。

 事業所統計や国勢調査などの公的資料も活用されるという。

②交通量

 主要な幹線道路であれば、自動車交通量の調査データが公表されているが、大抵は地道に数えている。また、現地を目で見る事はどの業者も必ずやっている。営業時間帯を中心に、週末と平日に分けてこまめに調べ、客層を確認して立地を評価する。

③周辺マーケット・競合店

 この項目は複数多岐にわたる調査を行っているようだ。周辺の飲食需要を見極めないと、人口も交通量も多いが、飲食需要は大きくない、という場合もありうる。

イ どんなエリアか?

学生が多い、サラリーマンが多い等、どんな客層なのか? どんな飲食店が発展しているのか、実際に現地を目で見ているようだ。

ロ 周辺飲食需要の大きさ

どのくらいの人が外食しているのか、お店にどのくらいの客席があるのかを調査している。店舗物件周辺の類似業態のお店の席数と、実際にどのくらいの人が飲食しているか、曜日、時間帯別に数値で把握しているようだ。

例えば焼肉屋をやるなら、周辺焼肉屋の席数とお客様がどの程度入っているのか調べる。具体的には、競合店の入店状況を継続的に調査し、売上予測をたてる。これを周辺エリアの複数店舗で行う。

 この結果、周辺20店舗で、平日の夜一時間に500人の集客があったとすると、20店舗の総席数が700席であれば、700席中の500席ですから、71%の満席率になり、これはかなり「入っている」状態となる。

 逆に、総席数が1500席であれば、満席率は33%になり「あまり入っていない」事になり、これだと、供給過多になってしまう。

 このような形で周辺の飲食需要を調べる。ちなみに、周辺に飲食店がない場合は相当にリスクが高い。

 

 

ハ 既に流行っている店の調査

20店舗も調査するのは時間がかかるが、凡その周辺地域の状況を掴むだけなら、繁盛店を調査する方法がある。

仮に最も流行っているのが、客単価4000円程度の居酒屋だったとする。そこの商品やサービスが異常に上手かったり、体験したことがないほど素晴らしい場合、特殊過ぎる事例なので次に流行っているお店を調べる。

 そこのサービスが普通だった場合、そこの客層を見て、スーツ姿の30~50代の男性が多ければ、この周辺で飲食店を最も利用する可能性が高い客層は「スーツ姿の30代~50代の男性」であるという仮説が成り立つ。

 そしてこの仮説をもとに調査をすすめると、周辺に公共機関が多い等、その理由も分かり、エリアの特徴が掴める。

 結果、平日は公務員等の社会人の客層、週末は20代~30代カップルや若者たちが飲みに来るエリアだと判明したりする。

 結果として、最も流行るのは「おじさんでも若いカップルでも使える居酒屋」となり、このように、最も流行っている店を探し出し観察することで、立地の特徴を大まかに把握することができると言われている。

 

ニ 周辺店舗調査の重要性

 これは非常に重要な事実なのですが、自分がお店をオープンする前から、立地周辺にはさまざまな業態の店舗が店を出し、繁盛店を目指して頑張っている。つまり、いろいろな業態が実証実験をして、すでに結果が出ているのです。

 

 これを利用しない手はないので、周辺店舗の調査は重要となる。 

 

 

④動線

 一般的に多くの人々は、心理的に「歩きやすい」「車で走りやすい」道路を選ぶ傾向がある。左右の歩道で同じ人数が歩くことはない。人の流れの中に店舗があるか見極める必要がある。

⑤視認性

 遠くから見てどんな店があるか分かるのを、視認性が良い、と言う。よって、基本的には一階にある店舗が視認性が高いです。木々が邪魔になって見えない、坂の途中である、左カーブの内側である等、視認性を邪魔する要素は多く、自然にしていて目に入ってくるかが重要となる。

⑥商圏

商圏とは、その店舗に来店するお客様が居住または勤務している範囲をいい、各種交通手段で一定時間で到着できる範囲を商圏と呼んでいる。

商圏の広さが同じであれば、商圏人口が多いほど、店舗経営において有利になる。

商圏の調査法としては、物件から東西南北あらゆる方向に自転車で3~5分ぐらい走る、という手法があるようだ。

 同じ時間で到達した地点にしるしをつけ、それをぐるりとつないで輪郭を描くと、大体の商圏の目安が出来る。

 この商圏と、役所の「町丁目別人口統計」などを照らし合わせれば、商圏範囲にどのくらいの人が住んでいるかが算出でき、世帯数で割れば、単身者が多いのか、大家族なのかなどが分かります。

 

立地については、大まかに上記のような点を調査し、じっくりと検討して決める。

飲食業者にとって立地は命でもありますので、一年以上かける事も珍しくありません

大手チェーンでも、専門の担当者が緻密な立地の調査を行った上で、取締役以上の企業トップから了解を得なければ決められません。それでも、失敗する事もあります。

 

 

2 補足、売上予測について

 

 立地における売上を予測し、そこから固定費を引き、利益が出るかどうかを検討する、というのは飲食業のみならず一般的な手法だとは思われます。

 ①周辺飲食店の売上状況、②多い客層の判断、③競合店売上予測、④自店売上予測という手順で行う。

 

①周辺飲食店売上状況

 ピーク時に飲食店に行き、客数を数え、同じ時間帯の周辺飲食店の客数を全て調べる、という手法がある。ただ、人数も時間もかかるため、調べたい時間帯に周辺飲食店に行って「今度予約をしようと思っているんですが、何人まで入りますか?」と尋ねる事によって探る、というやり方もある。向こうは大人数の予約を取るチャンスだと考え、各スペースや間取りを教えてくれたりします。そこで、席数や客数、客層を調べておけば、長居せず、お金もかからず、次の店の調査にもとりかかれる。

 こうして調査した結果の、各店舗の客数や客層を表にまとめ、最低でも、平日、週末のピーク時で2回実施し、平日と週末の客数の違いや、客層の違いを把握する。

②客層判断

 まとめた表を元に、周辺エリアでもっとも多い客層、もっとも流行っている店をみつける。

 次に、何故その客層が多いのか調べれば、オフィス街である等、理由が見つかる筈。

 そして、その周辺エリアの「人が集まる場所」も推定できるようになっている筈で、そこまで分かれば、戦略の指針も見えてくる。

③競合店売上予測

 調べた周辺店舗の中で、競合となる店舗をピックアップする。たとえば、最初の調査で周辺30店舗を調べており、自分が居酒屋をやりたいなら、居酒屋だけを拾い出す等、コンセプトが似ている店舗を選ぶ。

 その中で特に似ている店舗を3~5店舗ほど選び、くわしく調査していきます。実際に店舗に行って食事をし、商品・サービス力、詳細な客層、席数、客数、客単価、売りのメニューなどを調べます。3~5店舗も調べれば、人気のある店、ない店も分かり、また、売上の予測も立つ筈。

 そして、自分の店がその比較店舗のうち、どこに落ち着くかを客観的に判断することになる。

 似たような客層をターゲットにし、同レベルの商品力の競合店が平日でも満席ならば、自店も同じような状況を実現することは可能な筈です。

 逆に、どの店も週末は入るが、平日はガラガラだったとします。そうなるとよほどの差別化を図らない限り、自店も平日は暇になることが予想できます。

 競合店の集客状況、集客人数は、自店の見込み客と、とても深い関連性がある、という結論になる。

 

④自店売上予測

 最後に、自店の売上予測を行います。

 ここで、必ず、最低ラインの売上でも黒字になるように計画を組む。周辺店舗の売上予測はもう出来ている筈なので、自社がどのくらいのポジションになるか予想がついている筈。その最低ラインを元に計算する。家賃、人件費、水道光熱費、広告費等、全て引いて、どれくらい利益が出るか? その結果によって、出店するかどうか決める。

 

 

立地だけでも、結構深く考えると思いませんか?

こういう深さも結構面白いと思う。人間の社会は、深い。

ではでは